まなびやさんという塾を作った理由 その1

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※本記事には私の教員時代の経験が書かれています。

これはあくまで私個人の感想であり、日々努力をされている教員の方々や公教育を批判するような意図は決してありません。
当時感じた葛藤をそのまま表現したため、もしご不快に感じる方がおられましたら申し訳ありません。
お世話になった先生方には本当に感謝しておりますし、今でも年に数回は教員の友人たちと直接会って情報交換をしたり、近隣の中学校の授業を見学に行ったりもしています。
学校の先生と塾の先生とは、足りない部分を補い合う関係にあると考えています。

1、公立中学校教員としての経験

▼子どもたちの成長に関わる幸せ

私は以前、短い間でしたが公立中学校の教員として働いていました。
最初に教育の現場を経験したのは、教育実習の時です。
前年まで学級崩壊を起こしており、担任の先生が変わったばかりというクラスに配属されました。

授業中に奇声を上げながら屋根の上に飛び出した生徒のところへ行って学校の愚痴を聞いたり、体育祭の練習中に泣き出してしまった女子たちの相談に乗ったり(学級崩壊のせいでクラス間差別があり、他のクラスの生徒や先生から陰口を言われていたそうです)、職員室のガラスを割った男子グループと仲良くなるべく、ちょっとワルい風な先生を演じてみたり…。

実習最終日の別れの挨拶の後には、やんちゃをしていたグループのリーダーが
「先生、英語ってどうやって勉強すればいいんすか…」
なんて質問に来てくれたりして、たった3週間ながら本当にかけがえのない経験になりました。
G君、元気にしているでしょうか。

教員免許を取得してからは別の中学校の国語科教員として1年生と3年生を教え、卓球部の副顧問をしていました。
ここでも、定期試験の自主勉強会をきっかけに先生いじめをしていた生徒と打ち解けていったり、学園ドラマさながらの経験をすることができました。

このように私が中学校の教員として働いていた期間は、「子どもたちとの関わりに関して」本当に幸せなものでした。

しかし、「子どもたちの学習」に関しては、どうしても納得いかなかったのです。

▼公立学校でできること、できないこと

私が学校に勤務している間どうしても納得できなかったのは、「受け持った生徒全員の学力を上げられない」ということでした。
いくつか例を挙げると、管理職の先生方から授業の実施に関して、以下のような指導がありました。

・国語に正解不正解はない。
たとえ生徒が文脈的に誤った発言をしても「そういう見方もあるね」と拾ってやり、やる気をくじかないことが重要。

生徒に教師の考える「正解」を求めてはいけない。
授業で最も重要なことは生徒の関心・意欲・態度を伸ばすことである。

・同じ理由で、論理的な文章の文脈を追うなど生徒に負荷のかかる授業をしてはいけない。
とにかく生徒の集中や意欲を削ぐことをしてはいけない。

・時間がかかるため、授業中に辞書をひかせてはいけない。

・生徒の集中が削がれるため、音読をさせてはいけない。

等です。

また、以下のような厳しい状況も目の当たりにしました。

・選択制緘黙(かんもく。家庭などでは話すことが出来るのに、社会不安(社会的状況における不安)のために、ある特定の場面・状況では話すことができなくなる疾患。出典:Wikipedia)をもつ生徒に対し何も手が打てず、授業の間中とにかく教科書の漢字を(意味も分からないまま)書き写させるという指導が行われていた

成績が振るわず、勉強が嫌いになってしまいそうな生徒たちのやる気をどうにか維持したい。
特別な支援が必要な子もたくさんいる。
しかし、そばについてあげられる時間は非常に限られている。
全員を伸ばすことはできない。最大公約数的にできることをやるしかない。

このような状況が、私にとってはどうしても我慢できなかったのでした。
(※あくまで私個人の満足感についての話です。)

そういった教育観の教員がすべてではない、など様々なご批判があるかもしれません。
しかし1クラス40人近い生徒を1人の先生が受け持ち、さらに保護者対応、不登校やいじめなどに対する個別の対応、授業の準備・後片付けに研修、部活の顧問と校務分掌、体育祭や文化祭など行事の準備、受験学年は進路指導…を休日返上でこなすという現在の体制が変わらない限り、公立学校で「自分の受け持った全生徒の学力を、責任をもって必ず伸ばす」ことは物理的に不可能だと考えています。

私の受け持つ生徒は、97%以上が高校受験をする。
しかし今のやり方では、必ずどこの高校にも行けない生徒が出てくる。
希望通りの高校に進学できない生徒なんて、数えきれないくらいだろう。
その生徒たちに対してまだ、「国語に正解なんてないんだよ。君の考えは正しい。」と言えるだろうか?

私は自分の手の届く範囲だけでいいから、受け持ったすべての子どもたちの学力を伸ばしてあげたい。
こういった志から、自分の塾を開業しようと決意したのでした。

長くなってしまったので続きはまた次の記事に書きます。
次回は 2、大手塾勤務の経験 です。