🍵お茶の水女子大学附属中学校(略称:お茶中)の国語の授業を見学しました!

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🍵お茶中ってどんなところ?

東京都文京区にある、男女共学の国立中学校です。
お茶の水女子大のキャンパス内に、幼稚園~高校が併設されています。
少し前まで悠仁親王が通われていたので、ニュースで聞いたことのある方もいるかもしれないですね。

実はこの学校には、国語の授業に読書会を取り入れている先生がいらっしゃるんです。

以前読書会でご一緒したことがきっかけで、授業を見学させていただけることになりました。

🍵どんな授業を見学した?

読書に関する国語の授業を、2つ見学させていただきました。
内容はこんな感じです↓

授業①:「謎解きブックトーク」
授業②:「読書会(ブックカフェ)の本選び」

これがめちゃくちゃすごくてですね…本当にすごい授業ってこんな感じなのか!と感動しきりの2時間でした。

今日は「謎解きブックトーク」に絞って、お茶中でどんな国語の授業が行われているのかを紹介してみようと思います。

中学受験を検討されている方、まじで古澤に聞いてください。
区立の学校と国立の学校の授業、驚くほど違いますから…!

🍵お茶中の国語の授業「謎解きブックトーク」とは?

概要:謎解きブックトークは、ひとことで表すと「自分の好きな本をみんなに紹介する」という授業です。
が…ただ紹介するわけではなくて、その名の通り「謎解き」の要素が入っています。5分間1セットで、以下のように行います


①生徒がそれぞれ自分の好きな本を持ってくる
②5人ずつのグループに分かれる

③前半(2分間):
・5人のうち1人が、自分が持ってきた本の「表紙を見せる」
・他の4人は、表紙の絵やタイトルからその本の内容を「予想して当てる」
・紹介する生徒は、リアクション等でヒントを出してはいけない。

④後半(3分間):
紹介する生徒が、本の内容の正解を発表する(=本の紹介をする。ネタバラシ。)

🍵「謎解きブックトーク」の何がすごいのか?

本の紹介なんてどこの学校でもやってる?いやいや、そんなことはありません。渡邉先生の授業のすごさは、その「設計」にあります。

特に「2分間の予想タイム+3分間の紹介」という組み合わせが絶妙なんです。
普通の授業ではあり得ないような光景が展開されていました…。

🍵「謎解きブックトーク」の生み出す学習効果(ふるさわの見解)

「謎解きブックトーク」が、本を紹介する側の生徒にどんな効果を与えるのか?という視点で考えてみます。

私は国語の先生の視点になって、「これは何のための活動なのか?」と考えながら、生徒さんの紹介を聞いていました。
すると、

・「対話する(話す)」という方法で
・「要約する」

という活動なのだと感じました。即興の3分間スピーチなわけですね。
瞬発的な思考力と、論理的に説明する力が要求されます。

ちなみに普通の授業では、要約は書いて行うのが一般的ですよね。「本のあらすじをまとめてみましょう」のように。

これに対して「対話しながら要約する」という授業のデザインについて、すごいなと感じたところが3つありました。

すごいところ①:紹介を聞く側の生徒が、紹介する側の生徒の要約力を高めている

・1つめは、紹介を聞く側の役割です。
紹介者の論理に飛躍があったり説明が足りなかったりすると、聞く側の生徒が質問をするんですよね。

「それって具体的にどういうこと?」
「結局どうなったの?」

みたいに。

その質問によって、紹介者が自分の足りないところに気づいて、説明をリアルタイムに修正していく。ここがすごいなと思いました。

アウトプットにではなくプロセスに関与できていて※1、しかもそれを教師がするのではなく生徒同士で、自然にできていることに驚きました。

※1たとえば、作文の添削はアウトプット=完成したものに赤を加えることしかできません。完成したものを書き直すには手間がかかるので、子どもにとてもストレスがかかります。
「プロセスに関与する」ことは、国語の授業ではとても重要(だけど難しい)ことなんです。

すごいところ②:書くことが苦手な生徒でも文章力を高めることができる

・2つめは、書くことが苦手な生徒でも、要約や表現の練習をすることができるという点です。
ひと言ひと言が短かったり接続語の使い方が苦手な子でも、「最初は~」「で、~」「それで~」と、自分なりに順序や論理を組み立てようとしていることが伝わってきました。

もしこれが「文章で紹介しなさい」という課題だったとしたら、そういう子は筆が止まってしまって、50分という時間をうまく使えないと思います。

こんなふうに、「本を紹介する」という形をとることで、一般に行われている「あらすじを要約して原稿用紙にまとめる」のような活動の欠点を、とてもうまく克服できている!と驚きました。

すごいところ③:教師が指示しなくても、生徒が自分から表現を工夫している

・3つめは、「予想」と「紹介」を組み合わせることによって、生徒の主体性が自然と(生徒自身も自覚しないうちに)引き出されているという点です。
予想の時間があることで、3分間の紹介が「やらされ」になることを防いでいるんです。

もし、ただ本の紹介をするだけだったら、そこに意味を感じられない生徒が出てきてしまいますよね。
同じ班のメンバーが

「これって、主人公は女の人でしょ!」
「なんか話が重そうな感じがする~。」

みたいにいろんな(時には的はずれな)予想をするからこそ、紹介する側の生徒に「相手に伝わりやすいように工夫したい!」という意欲が自然と湧いてきます。

教師が「こんなふうに説明しなさい」と指示をしなくても、生徒が自分から表現や論理に工夫を凝らして伝えたくなる…この設計に驚きました。

授業が始まったばかりで、まだ場が温まっていないタイミングでも予想や質問が出やすいように、ぬいぐるみを回していく※2のもすごいアイディアだと思いました。

※2ぬいぐるみを持った人は、ひと言でもいいので何か必ず質問しなければいけないシステム。質問したら、ぬいぐるみを左隣の人に渡していく。
頭の上に乗っけている女子もいました笑

🍵まとめ

謎解きブックトークのことは知ってはいたのですが、実際に見てみて初めて分かることがたくさんありました…。
本当に学びの多い授業見学でした。

私はこの授業を見学するまでは、「国語のプロ講師として、私が教科書(本)の面白さを子どもたちに伝えなくてはならないんだ!」と思っていました。

でも今回、お茶中の生徒さんたちの姿を見て、私の読書会に必要なのは「子どもたち同士のやり取りが自然と学びにつながるように、『設計』をすること」なのかもしれないと感じています。

今回見せていただいた授業の工夫をどんどん取り入れて、古澤の読書会ももっともっとアップデートしていきます!

渡邉先生、貴重な授業を見学させていただいてありがとうございました!